古来文学探究プロジェクト

日本独自の古来文学(枕草子、徒然草、古今和歌集)に触れ、当時の人間と文学に登場する動植物がどのような関係性を保っているのか、
古来の文化と自然の共存・調和の事例やその現状を探究します。

午前中は府立京都学・歴彩館に赴き、古来文学(枕草子、徒然草、古今和歌集)における当時の自然観や筆者の感性、また古来の人々の自然と共生した暮らしについて学ぶとともに、吉川コーディネーターより、和歌の作法について講義をいただきました。午後には、府立植物園において、古来文学に描かれている植物を観察するとともに、フィールドワーク内で触れた植物を用いた和歌づくり・発表を行いました。

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「生物学と文学の二つの視点から
 考えるきっかけに」
 古来文学探究プロジェクト 参加者
 立川 理佳 氏

植物の観察や生態の学習をはじめとした今回のフィールドワークを通して、遠く時代の離れた人々が、今の私が見ているものと同じ花、木、草から何を感じ取りどう表現したのかについて、生物学と文学の二つの視点から考えるきっかけになりました。
また、短歌の上の句に『学んだ植物の名前』を入れて和歌をつくり交流したことで、従来の短歌に込められた感情の豊かさを感じ、これまでよりも植物をより身近に感じることができました。
次回の京都御所をはじめとしたフィールドワークも含めて、さらに植物との関係性を探究することで、今までとは異なる読み方ができるのではないかと思います。

「『いのち』のあわいで生まれる
 芸術こそ、日本文化の真髄」
 古来文学探究プロジェクト コーディネーター 
 吉川 成美 教授(総合地球環境学研究所/上廣環境日本学センター長・特任教授)

「古来文学探究フィールドワーク」初日が無事終了しました。
最初に京都府立京都学・歴彩館の若林 正博氏より『古今和歌集』から約1100年後、『枕草子』から約1000年後、『徒然草』から約700年後の現在、かつてから見た未来人の私たちが過去の人びとの想いをどう受け止め、動植物を通じて何を伝えるのか、植物園から1000年のスケールで観察することを教えてくださいました。
次に日本生態系協会の岩井 大輔氏からは、上記3つの古来文学に登場する絶滅危惧種を含む植物たちが、今に伝える自然観について、「生態系サービス」、「生物多様性」「ネイチャーポジテイブ」など、現在の地球環境の課題をめぐる概念と共に解説してくださいました。
どちらも限られたお時間のなかで、今回の講義のため対象にフォーカスして頂き、分かりやすく解説して頂きました。1000年の文化を未来へつなぐ壮大な物語の始まりを感じて頂けたかと思います。皆さんのメモを取る姿、観察する仕草から、大変高い集中力を感じました。そして皆さんには、フィールドワークで感じたことを五・七・五で表現する俳句ワークショップを体験して頂きました。 
何故、古来文学探究フィールドワークで植物や昆虫を観察し、それをきっかけに和歌を詠むことにしたのか?和歌や連歌の世界では、自然の移ろいや命の儚さ、季節感といったものが、心を映す鏡として大切にされてきたからです。
この自然への“まなざし”が、心を伝える詩を生み、他者とつながる感性を育てます。このような自然との対話が、和歌の本質であり、それは今日においても多くの示唆を与えてくれます。
さらに、皆さんにはこれから、自然と人の心をつなぐ古来の文学表現である「連歌」に挑戦していただきます。先日、皆さんに作っていただいた五・七・五の「上の句」に、他の方が七・七の「下の句」をつけるという形で、共作の文芸=連歌を体験していただきます。連歌は、古来より「座の文芸」とされ、古来より日本の文芸の本質は、「人の和に始まり、人の和に終わる」という共同性・相互性にあります。「座」とは単なる集まりではなく、たとえ孤独を自覚する者たちでも、日常を越えた次元で心を通わせ、生きる喜びを共有する場のことを指します。
一人ではなく、他の人と響き合いながら詩を紡ぐという、日本独特の文芸スタイルには、共感や想像力、そして自然への“まなざし”が求められます。共同性の中で共感するあらゆる「いのち」のあわいで生まれる芸術こそ、日本文化の真髄です。
次回、和菓子をつくるワークショップの後に、皆さんが仕上げた和歌を披露し合う小さなお茶会を予定しています。実は、茶の湯は和歌と深い関係で結ばれています。
最後にお茶とともに味わう和歌は、自然・人・心のつながりを感じるかけがえのない時間になることでしょう。どうぞ、感性の赴くままに詠み、仲間の句と心を交わしてください。皆さんの創造のひとときを、楽しみにしています。
古来の文学がつなごうとした、いつの時代も変わらないでいてほしい日本の美の価値は、未来にいる私たちへのメッセージです。この間、多くの和歌による日本文化の価値に触れてください。
「環境日本学」が伝える未来は皆さんが創るのです。

次回のワークショップは、
8月2日(土)に開催予定です